特集「京都の障害者支援の現場!」vol.3/就労支援センターアステップむろまち
障害者支援は多種多様でたくさんあり、一般の方にはとてもわかりにくくなっています。
この特集では、障害のある方やその関係者の方々に少しでも支援を受ける第一歩を踏み出しやすくなってもらえるよう、京都で障害者支援をしているさまざまな機関や取組みを紹介していきます。
目次
11人の支援員全員が国家資格を保持
今回ご紹介する就労支援センター・アステップむろまちさんは、京都市中京区室町三条下ルにある就労移行・就労定着支援事業所です。
就労移行・定着支援事業所とは、障害手帳や医師の診断書がある18歳から65歳の方が利用でき、おおよそ1~2年の通所でのトレーニングを通して一般就労、そして職場への定着を支援していく事業所です。
アステップむろまちは京都府内で唯一、精神科のクリニックが母体となっていて、11人の支援員の全員が国家資格である精神保健福祉士または作業療法士の資格を、またうち9人はジョブコーチの資格も保持していてとても専門性の高い支援をされています。
今回は9年前のセンターの立上げからの中心人物であり、京都のさまざまな場で障害者福祉に関わる数多くの情報発信も続けておられる所長の大石裕一郎さんにお話を伺いました。
アステップの名前には「明日へのステップ」という意味が込められていて、主に発達障害や精神障害のある方が一般就労に向けて一歩を踏み出すことを支援されています。
アステップむろまちを利用するために、その母体である「まるいクリニック」で診療を受ける必要はなく、利用者のうち半分は他の医療機関に主治医がおられる方だそうです。
そしてアステップむろまちでは、2016年度から2023年度までに150人もの一般就労を実現し、半年間の職場定着率も96%と高い結果を出しておられ、特に2019年度からはなんと毎年20名を超える利用者の方々が一般就労されているとのこと。
職種としては清掃や工場・小売店・飲食店のバックヤードなどの軽作業が約5割、事務職が約3割、そして児童館や介護施設、接客などの対人業務が2割弱だそうです。
「実習」を重視することで高い職場定着率を実現
アステップむろまちの最大の特徴は、「職場体験実習」を重視されていること。
センター内で就労に向けたトレーニングを積んでも、実際の職場にはそれぞれ固有の働き方や緊張感、空気感、人間関係などがあり、少しでも現場を体験してもらうことこそ職場定着にも重要です。
これはセンター開所以来の方針で、大石所長は早くから京都中小企業家同友会などを通じて数多くの経営者と接点を持ち、今では実習先はなんと200社以上もあるそうです。
センター利用開始から数週間後にはもう実習に出るケースもあり、利用者の方は平均して毎日約20人がセンターに通所、別の10人ほどは施設外実習に参加されているとのこと。週5日のうち3日はセンター通所、2日は実習というパターンも多いようです。
そして2019年から一般就労される人数が毎年20人を超えるようになった背景には、センターでの支援方針の大きな変化があったからだとのことです。
通所することが「楽しい」と思っていただく
大石所長は「2019年あたりから、いわゆる『訓練』を辞めました」とおっしゃいます。
「開所して3年が経った頃から、就職が近づいているにも関わらず退所する方が、数名出てしまったんです。よくよくその原因を考えてみると、支援員がどんどん忙しくなり、利用者の方々との雑談などができる雰囲気がなくなってしまっていたんです。『これじゃあ来るのも楽しくないよな…』と思うに至りました」。
そして大石所長は、利用者の方々に「あ、通所して良かったな」「今日も楽しかった!」と思ってもらえるようにするために支援の方針を根本的に見直されたそうです。
例えば、通所の方は午前中こそは全員で建物やセンター内の清掃作業などをしてから同じプログラムを受けてもらう一方で、午後からは3~4つのカリキュラムの中からそれぞれの利用者が受けたいものを選べるようにされたとのこと。
一方で利用者の方々に楽しんでもらうために、支援員が自分の得意なことを活かし、支援員自身も楽しめるような利用者との接点づくりを心がけるようにしていったそうです。
ある支援員がボディビルにはまっていたり、キックボクシングや登山などが大好だったりすれば、それぞれの知識などを活かしたカリキュラムや行事なども導入されているようです。
また、アステップを卒業し働き始められた方の交流会も2カ月に1度の頻度で開催されていて、毎回30人前後の方が参加し、近況報告などでの交流を楽しまれておられるとのこと。
さらにセンター外の方々に向けた「実践報告会」を定期的に開催されておられます。
これはアステップむろまちを通じて一般就労をされた方が「自分の体験が誰かの役に立てれば嬉しい」という声を活かす場として実施を決められたそうです。
他の「求職困難者」の方々への支援も検討
障害のある方に対する実験的な取り組みやシステムも積極的に取り入れ続け、数多くの一般就労を実現されてきたアステップむろまちさん。
大石所長はこうおっしゃいます。
「例えばひまわりと朝顔とヒヤシンスではそれぞれ育つ過程が違っていて、その違いに応じで水や肥料や太陽光などの加減を調整します。障害のある方にも1人ひとり違った個性や就労へのプロセスがあり、枠にはめずにそれぞれの方に合った支援こそをしたいと思っているんです」。
そして、これからは障害のある方だけでなく、社会福祉協議会などと連携してひきこもりやホームレスなどのいわゆる「求職困難者」の方々への支援も始めているそうです。
就労移行支援事業とは
前述のように「就労移行支援」とは障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつです。
一般企業などへの就職を目指す障害のある方を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートやトレーニングを実施しています。
対象となるのは障害のある18歳以上65歳未満の方で、原則最大2年間利用できて、多くの方において自己費用の負担はありません。
就労移行支援事業所では、利用者の方は事業所に通所し、サービス利用計画に基づいて障害のある方それぞれの特性や症状に応じて必要なトレーニングを受けられます。
2年以内での就職を目指し、実際に卒業して働き始めてからも最長3年半の「定着支援」を受けることも可能になります。
私たち京都の就労移行支援事業所スキルアップスマイルでは、「事務職スキル」「コミュニケーションスキル」などの向上と、特にご利用者一人ひとりの特性や状況など応じた支援を心掛け、過去に90人を超える障害者の就労を支援してきています。
そして、アステップむろまちさんを始めとした同じ京都の就労移行支援事業所のネットワークを通じて、さらに障害に対する知識を高めたりより良い支援方法を学んで、利用者の方々への支援の質を充実させていっています。
スキルアップスマイルの事業所は、京都の中心地である四条駅と烏丸駅に直結したビル内に構えていてとても便利ですので、ご興味のおありの方は一度見学がてらご相談にお越しいただければと思っています。
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