2023.07.06
海外の障害者雇用の現状はと日本との制度の違いとは?
目次
障害者雇用とは
あらかじめ障害を開示している方を対象としたもので、障害のある人だけの雇用枠「障害者雇用枠」で、障害のある人を事業主や自治体などが雇用することです。
「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって定められており、障害のある方が安定して働き続けることを目的としています。
企業や自治体は、従業員のうち決まった割合で障害のある方を雇用すること(これについては「法定雇用率って何?」のブログをご覧ください。)や、障害のある方への差別の禁止、合理的配慮を提供することなどが義務付けられています。
障害者雇用で働くための条件
障害者雇用枠での就職を目指す場合は、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳など手帳を保持していることが必須となり、事前に取得しておく必要があります。
各国の制度(法定雇用率を採用している国)
ますは、日本と同じく、法定雇用率を採用している国をみていきましょう。
フランス
フランスでは、従業員20名以上の企業に、全従業員6%の雇用が求められています。
達成できない場合は、制裁措置が取られ、3年以上雇用義務を果たしていない場合は、法定最低賃金時給の1,500倍の納付金、全くはたしていない場合は、1,875倍に当たる国庫への支払い義務が課せられます。
ドイツ
日本の障害者雇用制度は、ドイツのものを基につくられているので、ドイツの制度とは似ている部分が多くあります。
ただ、ドイツは雇用制度上の障害者の範囲が広く、障害度50以上が雇用制度上の障害者となりますが、この割合は日本の倍以上になります。
韓国
韓国では、従業員50人以上の事業所に5%の法定雇用率が定められています。
未達成の場合は、達成率に応じて負担額が変わり、達成率が低いと負担額は上がります。
法定雇用率を採用していない国
法定雇用率を採用していない国もあります。
イギリス
イギリスでは、1995年まで法定雇用率の制度がありましたが、廃止されました。
これは、後述するアメリカと同様、雇用義務制度自体が差別につながりかねないという考えからです。
障害者を新たに雇用する企業に試用期間中の賃金を助成するなどの取り組みがあります。
アメリカ
アメリカでは、差別禁止法によるアプローチが中心となっています。
州によっても制度は異なりますが、一般向けの援助を障害者にも適応する措置と障害者向けに準備されたサポートの両方があります。
スウェーデン
スウェーデンでは、障害者の雇用推進を目的とした法律はありませんが、障害のある労働者のニーズに合わせた労働環境の整備やバリアフリーなど、様々なサポートがあります。
一般の企業にステップアップすることを目指して経験を積む、「サムハル」も有名です。
日本との違いと課題
ここまで、各国の障害者雇用についてみてきましたが、国によって制度が異なることがみえますね。
日本の制度には現状の課題もあります。
簡単にお伝えすると、法定雇用率を達成できていない企業が払う給付金が、達成できている企業へ助成金として支払われる仕組みになっていますが、雇用率が上がると給付金の収入が減少してしまい制度の維持が難しくなってしまう可能性があります。
まとめ
各国の障害者雇用の考え方には違いがあり、法定雇用率を採用する国もあれば、それを差別につながる可能性があると考える国もあります。
考え方に違いはありますが、障害のある方が不当な差別を受けることなく、働くことができるよう取り組みを行っているという点では共通しているといえるでしょう。
主な出典:障害者職業総合センター『諸外国における障害者雇用対策』